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「聡美、お前の携帯か?鳴ってないか?」
聡美のジーンズのケツのポケットに差し込んである携帯から、俺にも聞き覚えのあるメロディが流れている。
ポケットから取り出された携帯からは、さっきより大きな音でメロディが流れていた。
「あれ? 藍子からだ」
サブディスプレイを見てそう言ったあと、電話に出た聡美は彼女と話だし、そして俺の顔を見た。
「何だ?」
「あ、今一緒なの、ちょっと待って、聞いてみるから」
彼女からの電話は、今晩一緒にご飯を食べないかという誘いの電話だった。
桜庭宅への誘い。
俺は少し考えたあと聡美に言った。
「さっきから少し頭痛がするんだ……。今日はやめておこうかな」
「あ、藍子、ごめん。真ちゃんね、頭が痛いの。……うん、ごめん、またね」
聡美は慌てて電話を切ると、俺の腕を掴みショッピングセンターの出口に向かった。
「聡美、どうした?」
「早く帰って寝た方がいい。あ、その前に薬飲んで……、ん? 今買って飲んだ方がいいね。
真ちゃん待ってて、薬買ってくるから!」
俺は店内に向かって走り出そうとする聡美の腕を掴んだ。
「帰ってからで大丈夫だ」
いや、全然大丈夫なんだ……。
頭痛なんて嘘なんだから。
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