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アタシがすると言ってきかない聡美の運転で、自宅へと向かった。
助手席に座る俺は、ぼんやりと窓の外を眺める。
「少し寝たらいいよ。薬飲んだから寝てるうちに効いてくるから」
俺をベッドに寝かせると、聡美は客用の掛け布団まで出してきて俺の上に掛け、再びいなくなったと思ったらもう一枚布団を持って現れた。
「おい、そんなに掛けたら暑いだろ。熱でダウンしてんじゃないんだから……」
「あ、頭痛だったね」
そう笑うと持ってきた布団を片付け、俺はやっと快適になった。
「買い物に行ってくるから、ちゃんと寝てるんだよ」
そう言い残すと聡美は出て行った。
ショッピングセンターまで行ったのに、俺の仮病がそれを無駄にしてしまった。
何故こんな嘘をついたのか。
理由は簡単な事だ。
桜庭の家に行けば、妊婦がいるからだ。
そこへ聡美を連れて行きたくなかった。
妊娠している藍子ちゃんと会話をする事が、辛くなるのではと思った。
違うな。
なんて事はない。俺がそれを見て辛くなるからだ。
聡美を理由にしてるが、辛いのは俺だ。
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