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……ちゃん一一
(聡美?)
「真ちゃん」
「ん……」
「大丈夫? まだ頭痛い?」
目を開くと聡美の顔がぼんやりと見えた。
心配そうに覗き込む聡美に、大丈夫だと答えると笑っているように見えた。
「今、何時?」
「5時。もう夕焼けの綺麗な時間になりましたが、月明かりの綺麗な時間まで寝てる気?」
笑いながら言う聡美に手を掴まれ起こされた。
「散歩に行こう」
「え……、今から?」
うん、と頷いた聡美は言った。
「頭なんて最初から痛くなかったんでしょ? お見通しだから」
(バレていた?)
「真ちゃんが頭痛い時はね、こんな顔になるの」
聡美はそう言って眉間に皺を寄せた。
俺の事をよく見てやがる……。
判っていて俺の嘘に付き合ったって事か。
並んで歩く俺の手に、聡美は自分の手を絡めてきて、ぎゅっと握ってきた。
そして、通り道の小さな商店の自販機の前で立ち止まり、ジーンズのポケットに手を入れると小銭を取り出した。
「真ちゃん、コーヒー?」
そう聞きながら、すでに自販機のボタンを押している。
ガコンッと音を立て、いつも俺が好んで飲んでいる缶コーヒーが出てきた。
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