夕日とベンチ

10/10

2582人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
  「俺は、聡美がいるだけで幸せだ……」      俺は缶コーヒーをベンチに置いて立ち上がり、聡美の前に立った。     「よし、よく言った。 いい? もう二度とグダグダ言わない事!」   「ぷっ」   「何?」   「いや……」     笑う俺を不思議そうな顔をして聡美が見ている。   この間、グダグダ言ってた聡美に喝を入れられるとは思わなかった。   それも15も年下の聡美に……。      俺よりも男らしいかもしれない。     【男らしい】が褒め言葉にならないと思った俺は その言葉は飲み込んだ。    しかし、聡美のそんなところに頼もしさを感じた。    同時に、俺はコイツがいないと駄目なんだと、改めて気付かされた。     「俺達は俺達だよな」   「そうだよ、真ちゃん」     またグダグダ言ったらゲンコツだから、と言って聡美は優しく笑った。     「おう、二度と言わないよ」   「ホントだね?」   「男に二言は無い」     俺の返事に、オッサン臭いと聡美が笑った。     ああ、俺はオッサンだよ。それがどうかしたか!    
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2582人が本棚に入れています
本棚に追加