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「ねぇ、次が男の子だったらどう?」
「男の子だったらって……」
何を言いたいのか判らずにいると、聡美は起き上がり話し出した。
「陽子のとこのさ。二人目が男の子だったらさ、《ももか》も《さくら》も付けられないじゃん」
言っている事は判るが、なんで聡美がそんな心配をしてるのかが判らん。
本に目を落とすと、聡美はまた口を開く。
「で、女の子の名前の候補が二つあるんだから、女の子が生まれるまで陽子は生み続ける。なのに生まれてくるのは男の子ばかり。
ぷっ。日本一の子沢山母ちゃんになったら、テレビ局がやってきて……、あ、アタシもテレビに映りたいから陽子宅へ通うの。
真ちゃんも一緒に行こうよ」
(何を言ってんだ?)
「いや、俺はいいよ」
「えーっ。テレビに映れるんだよ。行かないで後悔しても知らないから」
そう言うと聡美はまた腹ばいになって本を読み出した。
(アホか)
友達の出産でよくそこまで想像出来るもんだ。
俺もまた本に目を落とし、頁をめくろうとした時に来客を知らせるチャイムが鳴った。
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