家出妊婦

4/8

2582人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
  「はいはいはーい!」   聡美が立ち上がり玄関に向かう。     「うおっ! どうした?」   「ちょっとね……」     一体誰が来たのかと思い玄関の方に目をやると、聡美と一緒にリビングに入ってきたのは陽子ちゃんだった。     「工藤さん……。せっかくの休みの日にごめんなさい」   そう言って頭を下げる彼女に、座るように勧めた。     「どっこらしょ」   そう言って俺の向かいの椅子に腰掛けた彼女の身体は、横綱級に大きくなっていた。     「陽子、何かあったの?」   聡美が彼女の隣に腰掛けそう聞くと、彼女は言った。     「頭に来たから家出してきた」     (家出?)     「そんな大きなお腹して大丈夫なのか?」   「そうだよ、陽子。あんまり身体に負担かけちゃダメだよ」   心配する俺達をよそに、彼女は聡美が入れたお茶を啜って小さく息を吐いた。     「大丈夫よ。体調はいたって良好だから」   そう言って彼女はまた小さく息を吐く。     頭に来たから……。   喧嘩か?  
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2582人が本棚に入れています
本棚に追加