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「でさ、それを陽子は旦那さんに言ったん?」
「……。ううん、言ってない。一緒にいたらそこまで言いそうになるから……出て来た」
「なんだ、じゃ喧嘩じゃないじゃん。それに、なんだかんだ言っても言いたい事を我慢しちゃうんだね、陽子は」
聡美に言われ彼女は黙ってしまった。
「うちには子供がいないし、俺も父親じゃないからなんとも判らないんだが、女と男は感覚は違うんだと思うよ。
女性は子供を授かった瞬間から母親になってんじゃないのかな。
男ってきっと生まれた子供を抱いて初めて父親の自覚が芽生えるっていうか……」
上手く彼女に伝えられずにいると聡美が口を開いた。
「うちのお母さんも言ってたわ。
男って子供を触って初めて父親になるってさ。
彼に対して思う事あるならしっかり話し合いなさい。逃げて来たって解決しないよ」
聡美はお茶を入れ直し、彼女の目の前に置きながら更に続けた。
「自分が相手に望む事が全てじゃなくて、相手の事を理解する事も必要でしょ?
そのためにも二人で向き合って話をしなくちゃ」
なかなかいい事を言うなと思った。
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