家出妊婦

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  「彼と家族になったんだから、そういう事を大切にしていかないとさ。どんな事も二人でしっかり話す事だよ。 彼の事好きだから一緒になったんでしょ?」   「うん……」   「そのお茶を飲んだら送ってあげる」   「聡美、ありがとう。帰ってちゃんと彼と話す。彼の言ってる事も理解したいし、アタシの事ももっと解ってもらいたい」     さっきと比べるとかなり穏やかになった表情の彼女を見て、俺も安心した。   小さな事で揉めてもしっかり話し合う事。    互いに理解しあう事。     聡美はいつもそうだな、と俺は思った。     俺に対してもそのままにはしない。必ずぶつかってくる。     判り合いたい。     それがあるからなんだろう。     一回り以上も年下なのに、そういうとこは俺なんかより強い。   聡美は一緒にいる時間の中で、いろんな顔を俺に見せてくれる。    俺はきっと、そんな聡美だから出会った時から惹かれたのかもしれない。     そう思うと同時に過去の妻との事を思い出した。   あの頃の俺はどうだったんだろう?   アイツと本気でぶつかり合ったのだろうか?   いや、互いに溜め込んで、言いたい事の全部を吐き出す事もしていなかったように思う。     それじゃ何も伝わらない。     俺の傍にいる聡美は、相手と向き合う事を俺にも教えてくれているように思えた。     ところで彼女の問題は名付けだよな?   俺には小さな事に思えるけど、彼女にしたら大きな事なんだろう。     夫婦の間の問題は大きいも小さいも無いか……。  
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