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「桜庭っ!」
「工藤さん、ラーメンのびちゃいますよ。聡美ちゃんからのラブコールですかぁ」
そう冷やかしながら、ズルズルとラーメンを啜る桜庭の腕をとり席を立たせた。
「工藤さん?」
「生まれるんだ」
「は? 何が?」
「赤ん坊だよ、赤ん坊!お前の子供が生まれるんだ!」
「へっ?」
状況を理解出来ていない桜庭のラーメンの代金も一緒に支払い、奴の腕を掴み店の外に出ると、会社の駐車場に行き俺の営業車に乗った。
「藍子が……、生まれる……」
「桜庭、病院に行くぞ」
俺達は病院に向かった。
助手席に座る桜庭の思考回路が働きだし、興奮しているのか手が奮え出した。
割り箸を持った手が。
「俺、パパになるんだ。これからご対面だ」
「ああ」
「あ、でも、なんで2週間も早く? えっ? どういう事なんですかっ!工藤さんっ!」
「落ち着けっ!」
俺が喝を入れると、桜庭は握った拳を膝の上に置き、唇をギュッと噛んだ。
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