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「嘘っ! 聡美出来たの?」
判らんと答える聡美に、診察してもらっておいでよと彼女が言った。
「工藤さんも一緒に行ってあげて、私は大丈夫だから」
「いや、しかし、君を一人にする訳には」
「大丈夫。何かあれば看護師を呼ぶから」
彼女がそう言った時、病室に桜庭が駆け込んできた。
肩で大きく息をしながらボストンバッグを持ち、首からカメラを下げているその姿は、まるで観光客みたいで笑えた。
桜庭も来た事だし、彼女の母親もこちらに向かっているようだから、俺達は病室から出る事にした。
「じゃ、藍子。また来るからね」
手を振る聡美と一緒に病室を出てきた。
「真ちゃん、どうしよう。保険証持ってきてない」
「俺が帰って持ってくるから、受け付けでそれを言って診察を受けてこい」
1階に降りると聡美は受け付けへ、俺は外に出て病院の駐車場へ行き営業車に乗り込んだ。
こういう時外回りの営業で良かったと思う。
ハンドルを握りながらやっと落ち着いた。
昼飯の途中からバタバタしていて、何が何だか判らないうちに……。
聡美が妊娠!……したかもしれない。
さっきも驚いたが、今思い出してもっと驚いている俺がいた。
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