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再び病院の駐車場に車を入れ、建物の中に入る。
内ポケットから保険証を出して、待合室にいる人達の中にいるであろう聡美の姿を探した。
いない。
まだ診察室なのか?
あたりを見回し姿を探す俺の視界に聡美が映る。
売店で買い物をしていた。
「聡美」
そう声をかけると振り向いた聡美は、手にパンとジュースを持っていた。
「真ちゃん。お腹空いちゃって買い物してた」
俺を見て聡美は言った。
「ど、どうだったんだ?」
そう聞くと、聡美が笑顔になった。
「子供……、出来てたのか?」
「うん。出来てた」
その言葉を聞いた俺は、さっきまで車の中で否定していたくせに、そんなものはどこかに吹っ飛ばしていた。
嬉しさを噛み締める俺に、ジュースを一口飲んだ聡美が続けた。
「真ちゃん、来年パパになるんだよ」
「ああ、聡美もママだな」
「うん。真ちゃん、家族が4人になるんだから頑張って働いてね」
「ああ。判って……、えっ? 4人って……」
「双子だよ、ふ・た・ご!」
(えぇー!!)
一気に2児の父親か!
「ま、まかせろ。老体に鞭打って頑張るさ」
俺の言葉に聡美が笑い、それにつられて俺も笑った。
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