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「工藤さん、おめでとうございます! 双子ですってね」
仕事に出て会社の喫煙室にいた俺に、桜庭が声をかけてきた。
「まだ生まれてないぞ。あ、そうだ、お前のとこ生まれたんだよな。遅くなったがおめでとう」
「へへっ。目茶苦茶可愛い女の子が生まれたんですよ」
昨日の夕方に生まれたのは、聡美に連絡が入り俺も知っていた。
急にデレデレする桜庭を、今の俺は気持ち悪いとは思わなくなっていた。
多分、俺もこうなると判ったからだろう。
「名前は?」
「彩って付けたんですよ」
「いい名前だな」
そう言うと、桜庭の顔がますますデレデレになって、名前を考えるのに本を買った事や、もし使うならと思って持って来たやら、爪が小さくて可愛いやら……。
とにかく喋る桜庭に付き合わされた。
ずっと話が終わらず、俺は2本目のタバコを吸った。
本当に嬉しそうに話す桜庭はすっかり父親になっていた。
「聡美ちゃんにはビックリさせられる事ばかりですね」
双子が出来た事を言ってるのかと思ったら、それだけでは無く、桜庭は100人という数字を口に出した。
(ああ、あれか)
いい加減忘れろよ。
「聡美はな、スケールがデカいんだよ。俺はちっとも驚いてなんかいないぜ」
桜庭を見て俺はニヤッと笑ってやった。
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