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「ねぇ、ねぇ、真ちゃん立ってみて」
そう言われベンチから立ち上がると、聡美が歩き出し、その後を俺も続いた。
数歩行った先で立ち止まると、今度はベンチの方に振り返る。
「なんだ?」
そう聞く俺に同じ方向に向くように言い、並んだ俺の手を握ってきた。
低くなった太陽が背中に当たり、俺達の影が目の前に長く映し出されている。
手を繋いだまま、今度は聡美が一歩、また一歩と横に移動した。
繋がれた手はそのまま離れた。
「真ちゃん、手はそのまま」
そう言われた俺の手は、離れた時のままの位置で中途半端に止まる。
聡美が何をしたいのか俺には理解出来なかった。
「ねぇ、真ちゃん、いつかこのアタシ達の間に子供達が手を繋いで並ぶんだよ」
ああ、聡美は影を見てそれを想像しているのか。
「いつも直接手を繋いでいたアタシ達がね、これから子供を間に挟んで手を繋ぐの」
「ああ」
「楽しみだね」
「たまには直接手を繋ぎたくなるんじゃないか?」
「なるなる!」
聡美はそう言うと傍に寄り手を繋いできた。
「真ちゃんのこの大きな手が好き」
俺は、そう言って絡めてくる聡美の手をギュッと握った。
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