オッサンは辛いぜ

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  「あ、ダメ、ダメだったらーっ!」   聡美が叫ぶ。     俺はその声を無視して聡美の腹の上に出した。     「なんでーっ?」   「なんでも」   ベッドサイドの小さなテーブルの上にあったティッシュを数枚抜き取り、聡美の腹の上を拭う。     「真ちゃん、お腹の上じゃ子供は出来ないよ。 もしかしてボケちゃってんじゃないの?」   膨れた顔で聡美が言ってきた。     「俺は子供はいらない」   「へっ?」   起き上がった聡美は驚いた顔をしたまま暫く俺を見ていたが、そのあと大声で笑い出した。     「真ちゃん可愛い!」     (は? 可愛いってなんだ?)     今度は俺が驚いた。     「あれでしょ? 子供が生まれたらアタシを子供に取られるって思って、一人で勝手に子供に焼きもち妬いたんでしょう」   「い、いや……」   「可愛い、真ちゃん。 でも大丈夫。アタシが一番好きなのは真ちゃんなんだから。 子供が生まれても真ちゃんが一番だから」     なんて平和な女なんだ……。    
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