髪飾りを貴方に……

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 第二格技場の中に入るが中は誰も……。 トキは物音を耳にする。 暗闇に紛れて、何かが潜んでいる。 トキはすぐに電気のスイッチに手をかけた。 気味が悪く、こんな時間に人が来る訳がないと内心叫んでいる。  明順応していく瞳に映ったのは一人の少年。  濃灰色の少し伸びた髪は顔を隠すかのよう。 白い開襟シャツには中等部のリボンが微かに見えた。 後ろ姿でか細い背中は少年を弱々しくも見せる。 明かりに気付いたのか少年は両手を胸の方まであげたまましばらくトキを見つめている。 少年の瞳は赤く純血しており、頬には滴が伝ったあともトキには見てとれた。 .
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