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「大丈夫か、マリア?」
アンダーテイカー壊滅とシオンの復活。その二つを成し遂げた二人は魔術協会に帰る前にカーティス家へ戻ってきている。
しかし、ルナはカーティス家を前にしたマリアが震えて足を踏み出せないでいる事が心配であった。
「だ、大丈夫です。さあ、行きましょう、ルナ様」
「…………ああ、そうだな」
重厚な鉄製の門を開けて庭苑を歩き、大きな洋館を前に一度立ち止まる。
「行こうか」
「はい」
その言葉でマリアは扉を開けてルナが入ったのを確認してからマリアも屋敷に足を踏み入れる。
「お帰りなさいませ、ルナ様」
玄関には、どこから知ったのか二〇人ほどの使用人たちが整列してルナを迎え入れる。
「ふぅ……、父はおられるか?」
「旦那様でしたら書斎にて書類に目を通しておられます」
メイドの答えに軽く頷くと、ルナは正面の階段を上り、二階にある書斎へ向かう。
その際にもマリアはルナの後ろを静かについて歩くが、その表情は暗い。
「マリアは休んでいてもいいんだぞ?」
「いえ……、私も行きます。行かないといけませんから」
ギュッ、とマリアは服を掴んで俯き、恐怖から震える。
それも仕方がない、とルナは思い、マリアの身体を優しく抱きしめる。
二人は否が応にも、忘れたい過去を思い出させられていた。
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