†Epilogue†

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 一七年前。マリアがまだ四歳の時、彼女の家に侵入者が現れた。  彼女の家は、それなりに裕福でメルカトルでもそこそこの権力を持っていた。  だから、家族を護る人間も揃っていたのだが、それも侵入者の手により全滅。  マリアの父も母も殺されていた。侵入者の魔の手がマリアに伸びようとした時、偶然か必然か、彼女の家にメルカトルの魔術師団が到着し、犯人は捕縛されたらしい。  らしい、というのは当時四歳だったマリアには、その時の記憶はないからである。  それから五年後。マリア=ラヴァーはとある町の片隅に座り込んでいた。  町と言っても、そこは首都フィメールのように大きく、秩序のある町ではない。  親もいない、仕事もない、住む場所も日々の食べ物も満足にないような場所。いわゆるスラム街である。  小さな子供が親もなく座っていても誰一人として見向きもしなければ、手を差し伸べようともしないような場所。  自分は何故ここにいるんだろう、とマリアが不思議に思っていると、そこに視察としてルナの父親が現れた。 『行く所がないのなら私について来い』  そう言われただけ。  強制されたわけでもなく、自分から望んでついて行った。  彼が何の為に自分を連れて行こうとしているのか、この時は全く理解していなかったが、男の身なりから少なくともついて行けば日々の食事に困る事はないと思った。  今より最悪な事態に陥る事はないと思ったから、いや、幼いマリアはただ寂しかったから男について行ったのかもしれない。  しかし、彼女はこの時の判断が正しかったのか間違っていたのか悩む事となる。
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