†Epilogue†

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「なら教えてやる。その上でその男と婚約するかどうかはリースが自分で決めろ」  はあ? とリースは首を傾げるが、胡蝶の真剣な眼差しを受けて文句は喉奥へ飲み込み言葉を待つ。 「お前が婚約しようとしている男は四七歳で――」  二八歳も年上!? と驚愕に表情を固めるが、次の言葉で更に絶句させられた。 「――メルカトルの元皇。つまり、ミリアの父親だ」  リースは胡蝶が何を言っているのか理解出来ず、もう一度自分の中で言葉を反芻する。  そして理解した瞬間、 「はあああっ!? そんなの嫌に決まってるじゃない! ってか無理よ! 無理無理無理!! あんなヤツの国なんて行きたくないし、アイツが我が物顔で家の城を歩くなんて耐えられない!!」  年齢差がある分には耐えられるものもあるが、悪評高い強欲皇が旦那になるという一点のみでリースの中に嫌悪感が生まれる。  メルカトルと深い繋がりがあるからこそヤツの悪評を知っているし、何よりもリースの母親の葬儀にも「面倒だ」という理由だけで参列しなかったような最低な男。  いち早くメルカトルの危機を見捨てて故国へ逃げ出しておきながら、迎え入れてくれた前王を口手八丁で騙してその座を奪った愚王。  そんな男に嫁ぐなど、リースには有り得ない事だった。 「しかし、この縁談を断るなら恥を掻かせた罰としてアクアノイドを攻め滅ぼすとも言ってきておる」  父の言葉にリースは下唇を強く噛み、その表情に憤怒の形相を強く刻み込む。
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