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「ちょっと、よろしいですか」
「は、はあ・・・何か?」
ここはエヌ氏の職場、小さな工場。エヌ氏は、この工場の責任者である。
警部はエス氏の自宅を出て、すぐにここへとやってきた。エヌ氏と話すためだ。
「警察です」
手帳を見せて言う。
「け、警察?警察がうちに何の用でしょうか?」
「実はですな、あなたの友人であるエス氏が殺されたんですよ」
「殺された!?」
「しっ、今はまだこれは内密に」
すると、エヌ氏は奥の部屋のドアを指差し、
「そういうことでしたら奥へ参りましょう」
警部を中に導いた。
「お気遣いどうも」
中に入るなり、早速エヌ氏は聞いた。
「ところで、エス氏が殺されたというのは本当ですか?どうも信じられないのですが・・・あ、いや、あなたを疑っているというわけではありませんよ」
「わかっておりますとも」
そう言いつつ警部は鞄から一枚の写真を取り出した。
「このとおり」
そこに写っていたのは、先ほど撮ったばかりのエス氏の写真。さすがに腹部は塗りつぶしてあるが、死体を真上から、枠線ギリギリいっぱいにとらえたその光景は、十分にショッキングなものだ。
「ひどい・・・」
エヌ氏も驚いた様子。
・・・それとも計算か?
「というわけです。何か知っておりますかな?」
「さあ、私は昨夜はここで仕事をしておりましたので、何とも・・・」
「そうですか。・・・ちなみに、エス氏とはどのくらいの頻度でお会いに?」
「ええと、週に2回ほど、一緒に酒を飲む程度です」
「なるほど。ご協力感謝いたします」
「あっ、警部。どうでしたか?」
部下は帰ってきた警部に尋ねた。
「あいつだ」
「え?」
「犯人はまず間違いなくエヌ氏だ。家宅捜索の準備をしろ」
「いや、でも・・・」
若い部下は困惑している。
「さあ、早く!・・・さて、これから忙しくなるな・・・」
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