第一問 エヌ氏の失敗

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「ちょっと、よろしいですか」 「は、はあ・・・何か?」 ここはエヌ氏の職場、小さな工場。エヌ氏は、この工場の責任者である。 警部はエス氏の自宅を出て、すぐにここへとやってきた。エヌ氏と話すためだ。 「警察です」 手帳を見せて言う。 「け、警察?警察がうちに何の用でしょうか?」 「実はですな、あなたの友人であるエス氏が殺されたんですよ」 「殺された!?」 「しっ、今はまだこれは内密に」 すると、エヌ氏は奥の部屋のドアを指差し、 「そういうことでしたら奥へ参りましょう」 警部を中に導いた。 「お気遣いどうも」 中に入るなり、早速エヌ氏は聞いた。 「ところで、エス氏が殺されたというのは本当ですか?どうも信じられないのですが・・・あ、いや、あなたを疑っているというわけではありませんよ」 「わかっておりますとも」 そう言いつつ警部は鞄から一枚の写真を取り出した。 「このとおり」 そこに写っていたのは、先ほど撮ったばかりのエス氏の写真。さすがに腹部は塗りつぶしてあるが、死体を真上から、枠線ギリギリいっぱいにとらえたその光景は、十分にショッキングなものだ。 「ひどい・・・」 エヌ氏も驚いた様子。 ・・・それとも計算か? 「というわけです。何か知っておりますかな?」 「さあ、私は昨夜はここで仕事をしておりましたので、何とも・・・」 「そうですか。・・・ちなみに、エス氏とはどのくらいの頻度でお会いに?」 「ええと、週に2回ほど、一緒に酒を飲む程度です」 「なるほど。ご協力感謝いたします」 「あっ、警部。どうでしたか?」 部下は帰ってきた警部に尋ねた。 「あいつだ」 「え?」 「犯人はまず間違いなくエヌ氏だ。家宅捜索の準備をしろ」 「いや、でも・・・」 若い部下は困惑している。 「さあ、早く!・・・さて、これから忙しくなるな・・・」
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