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「え? どこ行くんですか?」
「決まってんだろ、調査だよ」
いきなりのアルバートの行動に、サラは面食らったようだった。
年季の入った焦げ茶色のコートを羽織ったアルバートは、おもむろに事務局から出て行こうとする。
「ま、待ってくださいよ! まだ細かい話が……それに、どこに行こうというんですか?」
困惑しっぱなしのサラに、アルバートは鬱陶しそうな目を向けた。
「犯人の目星はついている。そのなんちゃらワークマンは、わざわざ被害者の顔を切り貼りしてるんだろう? そんなことを短時間で出来るのは、恐らくは医者。それか、それに準ずるものだ。とくれば、最初に聞き込みに行くとこは病院だよ」
当たり前のことのようにまくし立てたアルバートに、サラはパチパチと目をしばたたかせた。
「凄いですね。私が言おうとしたこと、だいたい言われちゃいました」
素直に感嘆の念を述べるサラ。
アルバートはふっと小さな笑みを浮かべると、
「なぁに、ただの勘だよ。……長年の経験に裏付けされた、な」
と、得意気に言うのだった。
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