1.パッチワークマン―①

12/22
前へ
/81ページ
次へ
3人が忙しないロンドンの街中を歩き国立病院に向かう途中、サラは事件について詳細な話を始めた。 「それでさっき、だいたい言われちゃった、って言いましたよね」 「ああ、それが?」 サラはアルバートの隣を歩き、後ろからはちょこちょことキュリオがついて来ている。 端から見れば、家族で出掛けているようだった。 「実は私、犯人じゃないかなって思ってる人がいるんです」 がしかし、その口ぶりは家庭の会話とは到底似ても似つかない、極めて重いものだった。 「……どういうことだ?」 アルバートは声帯を極限まで絞って、しわがれた聞き取りにくい声で聞き返した。 「病院には、前々から父さんと仲が悪い医師の方がいて。……その人から、何か怨みを買ってたんじゃないかと」 「なる程。しかし連続殺人鬼に怨恨で殺される、ねぇ」 アルバートには、どうもその点が腑に落ちなかった。 しかし、諍いがあった人物がいたというのは大きな手掛かりである。 アルバートの足取りは、自然と早くなっていた。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

268人が本棚に入れています
本棚に追加