268人が本棚に入れています
本棚に追加
3人が忙しないロンドンの街中を歩き国立病院に向かう途中、サラは事件について詳細な話を始めた。
「それでさっき、だいたい言われちゃった、って言いましたよね」
「ああ、それが?」
サラはアルバートの隣を歩き、後ろからはちょこちょことキュリオがついて来ている。
端から見れば、家族で出掛けているようだった。
「実は私、犯人じゃないかなって思ってる人がいるんです」
がしかし、その口ぶりは家庭の会話とは到底似ても似つかない、極めて重いものだった。
「……どういうことだ?」
アルバートは声帯を極限まで絞って、しわがれた聞き取りにくい声で聞き返した。
「病院には、前々から父さんと仲が悪い医師の方がいて。……その人から、何か怨みを買ってたんじゃないかと」
「なる程。しかし連続殺人鬼に怨恨で殺される、ねぇ」
アルバートには、どうもその点が腑に落ちなかった。
しかし、諍いがあった人物がいたというのは大きな手掛かりである。
アルバートの足取りは、自然と早くなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!