1.パッチワークマン―①

6/22
前へ
/81ページ
次へ
「――は、はァ。依頼ねぇ」 客人に気付いた初老の男は、すぐに女性を迎え入れた。 テーブルの上には、女性の持ってきた新聞が一枚。 『パッチワークマンの出現』と、一面に大きく見出しが書かれている。 「と、依頼の話の前にまずは名乗ることから始めないとな。俺はアルバート・ホルムズ。そしてあっちが」 「助手のキュリオ・ワッチソンです」 「いや、俺は助手と認めてないけどな」 微妙な沈黙が流れた。 アルバートのぶっきらぼうな物言いに対し、キュリオは大して気にしていないのかマイペースにキッチンでお茶を淹れている。 「あ、あのー……彼は助手じゃないんですか?」 「ああ、あいつはさしずめ犬ってとこだよ」 酷い言われようだった。 しかし、キュリオにとってはもはや日常茶飯事の出来事なのだろう。 「お待たせ致しました」 それまでのことなど全く耳に入っていなかったかのように、自然な笑顔でテーブルの上に紅茶を並べていった。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

268人が本棚に入れています
本棚に追加