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「そりゃあ無いわー」
力無く呟きながら、とぼとぼと家路に着く。
今日、何時ものように出勤して会社が、倒産したのを知った。
経営が、芳しくないのは、周知の事実には、違いなかったがこんなに突然だなんて…
「夜逃げしたいのはこっちの方だよ!」
責任を放棄して、逃げた経営陣。
行き場の無い怒りを込めて近くに転がっている石ころを蹴った。
石ころは、思いの外遠くへ飛んで行く。
「うっ、いってぇー!」
石ころは、5メートル程離れて向かい合っているカップルの男の足に当たったらしい。
弁慶の泣き所…脛を押さえながら男が、キッとこちらを睨む。
冷ややかな視線と歪んだ表情、背筋を冷たいものが走る。
思わず
「ごめんなさいっ!大丈夫ですか?」
と、駆け寄りながら謝罪の言葉を口にする。
「気をつけろよな!お・ば・さ・ん!」
馬鹿にしたように一瞥され、後は、無視ですか…
カップルは、揉めている最中だったらしく、私の謝罪も 耳に入らない様子。
無視された状況を幸いに私は、そそくさとこの場を無事抜け出す事が出来た。
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