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僕は壊れてしまった機械猫のお墓を作っていたのだ。だからそのときのその様子を語ることはできない。 そのとき、君は高円寺のあの散歩道を歩いていたという。君はそこで、猫の形をした言葉を見たという。僕には機械猫がいた。君はその言葉を追いかけた。君は何が知りたかったのか? 君は言葉を追いかけて、やがて見失った。君にはだから、言葉のそこんところが少し、足りないんだ。 機械猫は僕の気持ちを食べ過ぎて、右の耳のゼンマイが、外れてしまった。たったそれだけで僕の気持ちはあふれて出て、その辺一帯が全部、僕の気持ちで埋め尽くされて、機械猫は食べ切れなかった僕の気持ちに押し潰されて死んでしまった。 僕は壊れた機械猫のお墓に、僕の気持ちを少し埋めてしまった。 僕にはだから、気持ちのそこんところが少し、足りないんだ。
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