君の元へ戻らない

奪還

「俺はその男より優を愛してるのに！」

合わせた視線をまた逸らして拓也は言った。

翼と比較するんじゃなく、「誰よりも愛してる」と言って欲しかった俺は贅沢なんだろうか。

拓也はまるで自分のオモチャを取られまいと必死になっている子供みたいで。

やっぱり俺はもう拓也の恋人じゃないんだね。

「拓也、それは好きなんじゃない。独占欲からくる執着だよ」

拓也に言い聞かせるように発した自分の言葉に心臓が痛む。

だけど、こんなに痛くて切ないのに、どうして穏やかな気分なんだろう。