12371人が本棚に入れています
本棚に追加
「失礼」
男は女性にそう言うと、席を離れ電話にでた。
「ちょっと!! まだ話している途中よ!!」
男は女性の言葉は無視して続ける。
「はい、はい、ご注文の品は只今仕入れ中で…………いや、少々お待ち下さい……。ご用意出来るかもしれません。
後程かけなおします」
男は電話を切り椅子に座る。
「まことに申し訳ありませんでした。
……代わりといっては何ですが、素敵な男性を紹介しようと思うのですがどうでしょうか?」
「素敵な男性!?」
女性の顔がパッと明るくなる。
「はい。背が高くて、頭が良くて、スタイルが良くて、格好良くて、お金持ちで、美食家で、料理をするのが好きな男性です」
「本当!? 料理もできるの?」
「はい。特に肉料理が得意なそうで。彼を紹介しましょう。話は通しておくので今から彼の家に行ってみてはどうですか?」
そう言って男は女性に写真と名刺を手渡した。
名刺には神崎正彦という名前と、連絡先と住所が載っている。
写真には話通りの男が写っていた。
「そうね!! ありがとう!! 今から行ってくるわ!!」
女性は喜んで店から去った。
女性がいなくなった後、男は携帯電話を取り出した。
手慣れた手付きで番号を打ち込こんでいく。
目当ての相手はすぐに電話に出た。
「――もしもし、神崎様ですね。先ほど注文された"素敵な食材"をそちらにおくらせて頂きました」
最初のコメントを投稿しよう!