素敵な彼氏

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その客は女性だった。 年齢は二十代後半だろうか。 足取りはおぼつかず、この暗さでは分からないが顔は真っ赤だった。 相当に酔っているようだ。 会社帰りに飲んできたのか、彼女のブラウスはよれよれになっていた。 「あれぇ? なにここ~?」 女性は男に話しかける。 男は黙って看板を指差した。 「何でも……屋? …………アハハハハッ何それ!! だっさーい!! 今どき流行んないよこんな店」 男は黙って座っている。 「何でも屋だったらさぁ~ちょっと私の願い叶えてよ……って出来るわけないかっアハハハハ」 男は黙って座っている。 「もう~無視しないでよ!! そうだ!! ちょっと聞いてよ~」 女性はそう言うと、男の向かいに置いてあった椅子にドスンと腰をおろした。 「私ね~今好きな人いるんだけど全然振り向いてくれないの!! あっ、高梨さんって言うんだけどね。それでさ今日みんなで飲みに行ったときも私より若い娘とばっかり話してるんだ~マジ最悪!!」 女性は男に愚痴をこぼし始めた。 男は黙って座っている。 「特に真奈美ってやつがウザいの!! ちょっと可愛いからって高梨さんにめちゃめちゃ言い寄ってんの。私の方が先だったのに。マジ会社辞めて欲しい!!」 「出来ますよ」
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