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「え?」
「真奈美って人、辞めさせられますよ」
「……アハハハハッ何言ってるの!! てか初めて喋ったね。話せないのかと思ってた!! あービックリした!!」
男の言葉を女性は全く信用していないようだった。
「これを」
男は机の上に置いてあった一枚の紙をスッと前に出す。
「何……コレ?」
その紙には【辞めさせ紙】と書いてあった。
「その紙に名前を書くと、書かれた人は仕事を辞めてしまうんですよ」
「…………んなわけないじゃん。バカじゃないの?」
「いえいえ本当です。最初ということで無料でよろしいですよ。さあ名前を書いてみてください」
男はペンを渡す。
女性は不機嫌になった。
「馬鹿にしないで!! 私のことがめんどくさいから早く帰したいだけでしょ!!」
勢い良く立ち上がりバンと机を叩く。
「いいわよ!! 書いてやるわよ!!」
女性はそう言って紙に“高橋真奈美"と書くと、怒って帰ってしまった。
次の日。
男は昨日と同じ場所に店を開いていた。
夜も更けてきた頃、昨日の女性がまたこの店にやってきた。
今日は酔っていないようだ。
「あの紙本当だったわ!! 真奈美、今日会社辞めた!! 凄いわこの店!!」
女性は興奮した様子で椅子に座る。
男は黙って座っている。
「でも駄目なの。ライバルが消えただけで結局私と高梨さんには何の進展もないわ!! 他にいい商品はないの!?」
男は黙って座っている。
「別にいいわよ!! 自分で探すから」
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