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夜が来た。寝ないように昼寝もしておいた。
携帯も特別なマナーモードでなにも音がしない状態に設定しておいた。
残り三十秒。私は札を抱きしめ、目を固くつむった。
――ピーンポーン。
インターホンの音がした。母と父はこの時間は仕事で帰ってこない。それに鍵を持っている。
それじゃあ……。
――ピーンポーン。
やはりあの少年なのか? 私の瞼は更に固くつむられた。
ドガッ!
急に木材が蹴られたような音がした。
私の体はビクッと跳ね上がった。心臓が飛び出るかとも思った。
そしてその音の後に、ずっずずずっと足を床に擦って歩くような音が断続的に聞こえるようになった。
私の目は、閉ざされた暗闇の中でも、あの少年の赤い目が焼き付いて消えず、常に睨まれているような錯覚に陥っていた。
その断続的な音は私を探し回っているようで恐ろしかった。
見つかった瞬間にあの耳元まで裂けた口で食べられる映像を想像して凍りついた。
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