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沙羅がそう言って何故このような事態になったかを思い出した。
俺が沙羅の誘いを断ったからだ。
だが沙羅の質問には語弊がある。
俺が泳げたら沙羅の誘いを断っているはずがない。
第一、沙羅と泳ぐのが嫌だった訳じゃなくて、泳ぐという行為自体が嫌だっただけだ。
さて、どう説明しようか……
なんて数秒考えてるそぶりを見せただけで、沙羅の表情は不安色に舞い戻ってしまった。
俺は雑に沙羅の頭を撫でる。
「あーもう一々不安がらなくても大丈夫だから!」
「うー、だって…」
「沙羅と泳ぐのが嫌だったんじゃないの!ただプールに入る気がなかったからひなたぼっこしようと思ってただけ!」
ちょこっと嘘ついちゃったけど気にしない。
入る気がなかったのは事実だしね……
すると沙羅はぽかーんとした表情で俺を見つめていた。
「……それだけ?」
「それだけ」
俺がきっぱり断言すると、沙羅は胸を撫で下ろしたようだった。
「なんだ~そういう事なら言ってくれればよかったのに」
そう言うと、沙羅は頭を俺の肩に乗せて寄り添ってきた。
……い、いかん!
俺の心臓が持ちまてん。
「ずっとこうしてる」
俺は沙羅の発言に驚きを隠せなかった。
「ずっとって、もうプールはいいの?」
俺がそう言うと、沙羅は一度頭を上げてニッコリと微笑んだ。
「前も言ったでしょ?私は幸助君がいてくれるだけで幸せなんだからこのままでいいの!」
……反則だ……
俺は沙羅の背中に手を回して抱き寄せた。
「こ、こ、幸助君!!?
人前だよ!!!?」
「沙羅が可愛いのが悪い」
……まったく……そんな恥ずかしい台詞を笑顔で言うなんて……
俺じゃなかったらこの娘襲われてるよきっと……
「フフフ、人前で抱き合うとは君達も成長したものだな」
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