水泳~実は俺……~

11/22
前へ
/413ページ
次へ
沙羅がそう言って何故このような事態になったかを思い出した。 俺が沙羅の誘いを断ったからだ。 だが沙羅の質問には語弊がある。 俺が泳げたら沙羅の誘いを断っているはずがない。 第一、沙羅と泳ぐのが嫌だった訳じゃなくて、泳ぐという行為自体が嫌だっただけだ。 さて、どう説明しようか…… なんて数秒考えてるそぶりを見せただけで、沙羅の表情は不安色に舞い戻ってしまった。 俺は雑に沙羅の頭を撫でる。 「あーもう一々不安がらなくても大丈夫だから!」 「うー、だって…」 「沙羅と泳ぐのが嫌だったんじゃないの!ただプールに入る気がなかったからひなたぼっこしようと思ってただけ!」 ちょこっと嘘ついちゃったけど気にしない。 入る気がなかったのは事実だしね…… すると沙羅はぽかーんとした表情で俺を見つめていた。 「……それだけ?」 「それだけ」 俺がきっぱり断言すると、沙羅は胸を撫で下ろしたようだった。 「なんだ~そういう事なら言ってくれればよかったのに」 そう言うと、沙羅は頭を俺の肩に乗せて寄り添ってきた。 ……い、いかん! 俺の心臓が持ちまてん。 「ずっとこうしてる」 俺は沙羅の発言に驚きを隠せなかった。 「ずっとって、もうプールはいいの?」 俺がそう言うと、沙羅は一度頭を上げてニッコリと微笑んだ。 「前も言ったでしょ?私は幸助君がいてくれるだけで幸せなんだからこのままでいいの!」 ……反則だ…… 俺は沙羅の背中に手を回して抱き寄せた。 「こ、こ、幸助君!!? 人前だよ!!!?」 「沙羅が可愛いのが悪い」 ……まったく……そんな恥ずかしい台詞を笑顔で言うなんて…… 俺じゃなかったらこの娘襲われてるよきっと…… 「フフフ、人前で抱き合うとは君達も成長したものだな」  
/413ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44582人が本棚に入れています
本棚に追加