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「沙羅、よく分かんないけどありがとな?」
俺は少しだるい身体を起こしながら沙羅にお礼を言った。
パンッ!
…………へっ?
最初は何が起きたか理解できなかった。
だが、確かに熱や痛みを感じる頬がすぐに教えてくれた。
……沙羅が……俺をぶった……
すぐに沙羅の表情を見た。
険しく、強張っているが、涙目だった。
そして、一瞬にして悲しみに満ちた表情になると、
勢いよく俺に抱き着いてきた。
「バカ!バカ!なんであんな無茶したの!?私、心臓が止まるかと思ったんだよ!?このまま幸助君が目覚めなかったらって……」
……ホントに、俺の馬鹿さとアホさは筋金入りだな……
こんなにも可愛い彼女を泣かせるなんて……
そのうえ沙羅は怖かったのか、ずっと身体を震わせている……
俺は震えが止まるように、少し強く抱きしめた。
「……沙羅……ゴメンな?」
「……もう、こんなのヤダよ?」
「うん」
俺が頷くと、沙羅の震えは少しずつ止まり、同時に泣き止んでくれたようだった。
周りが見てるかもしれないが、俺はしばらく沙羅を抱きしめていた。
「幸助君、もう大丈夫だよ」
「そっか」
沙羅が落ち着いたようなので、俺は沙羅から身体を離した。
離れてみるとすぐ分かる。
……いかに沙羅が温かい存在かという事を……
「それで幸助君、なんで言ってくれなかったの?」
……まあそうなるわな。
沙羅は強い目で俺を見つめていた。
これはもう嘘はつけないな……
だいたい、これ以上沙羅に嘘はつきたくないないしね。
俺は自分の胸の内を正直に暴露した。
「……だって、泳げないなんてカッコ悪いじゃん……」
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