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「……えっ……?」
沙羅が驚いたような表情で俺を見つめている……
そりゃこんなガキみたいな理由だったら驚くわな……
「沙羅にカッコ悪いって思われたくなかったんだよ。まあ、あんな醜態晒してもう何も言えないけどさ」
うわー、自分でこういう事言うのってすげえ恥ずかしいよな……
まあ事実だから仕方ないんだけどさ……
さすがに沙羅も呆れるよな……
と思ったのだが、沙羅はニコニコしながら俺を見つめていた。
「ふふっ、思い詰めて言うから何事かと思ったけど、そんな事?」
「そんな事って、だって中学の時はかなり馬鹿にされたんだぞ!?友達とプール行けない理由が泳げないなんてカッコ悪いにも程があるっての!」
沙羅にそんな事と言われたのは、正直イラッとした。
俺のコンプレックスが蔑ろにされたみたいに思えたからだ。
でも、沙羅がそんなつもりではないという事がすぐに分かった。
「違うよ、さっきの幸助君、すごくカッコ良かったよ!」
……はい?
溺れて死にかけた俺がカッコ良かった?
冗談が過ぎるよ沙羅……
「沙羅、そんなに気にしなくていいよ、俺は別に…」
「自分の彼女の言う事が信じられないの?」
「えっ、いやそうじゃないけどさ……」
急に真剣な顔付きになった沙羅に少なからずたじろいでしまった。
でも沙羅は、すぐに優しく微笑んで俺を見た。
「ホントだよ。だって幸助君すごく頑張ってたもん。皆は笑ってたかもしれないけど、私はずっと幸助君を応援してたもん!……さすがに沈んじゃった時は怖かったけどね……」
……俺、沙羅が彼女で良かった。
あんな状況でもしっかり俺を見てくれていたんだと思うと、自然と胸が熱くなってきた。
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