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「茅島ちーん、ちょっといい?」
俺がプールサイドに着いて、いざ沙羅を応援しようという時に谷口に話し掛けられた。
「どうした?沙羅がそろそろ泳ぐから早くして欲しいんだけど…」
「まあまあ茅島ちん、私と取引しない?」
谷口は俺を宥めながら訳の分からない事を言った。
「なんだよ取引って…」
くだらない事で沙羅の応援ができないのは嫌だぞ?
俺は急かし気味に谷口に問い掛けた。
しかし谷口は、俺の荒げた口調にも微動だにせず、ニヤニヤしながら俺を覗き込んでいる。
……なんか、嫌な予感が消えないんだが……
「アハハ、これを見てもそんな事が言えるかな?」
そう言って取り出したのは………
まさかのデジタルカメラ。
……おい……冗談だよな?
「必見!学校でやっちゃった!?茅島ちんと沙羅のキスシーン!!おー、いい響きだね~」
俺さ、時々思うんだよ。
カメラって、素晴らしいよな?
嘘だあぁぁあぁ!!!
完全に皆の視線がプールにいく瞬間を見計らってキスしたんだぞ?
それなのになんだ?
この女子はずっと俺達に狙いを定めてシャッターチャンスを待っていたというのか?
……不覚だ……
てかプールにカメラ持ってくるってどういう事?
「いやぁ、先輩の言う通りだったよ!茅島ちんは必ず何かやらかすからカメラ持っといた方がいいって!」
………先輩………?
「…谷口、その先輩って誰だ?」
いや、聞くまでもない。
運動会の時も似たような事してたし、俺を陥れようとする人物は一人しか心当たりがない。
「綾先輩だよ~」
いい加減にして下さい。
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