誕生日~てんてこ舞いな日~

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  「よし、俺からだ。覚悟しとけよ茅島!」 「お、おう」 気合いが入っている忍に思わずたじろぐ俺…… あの忍がここまで熱くなるなんて…… 孤児院一の料理の腕っていう称号はそんなに重要なのか? まあ俺だって同世代の奴に料理で負けるのは嫌だけどさ…… すると、忍は俺の前に鍋を置いた。 「フッ、茅島。これが俺の芸術だ!」 そう言って鍋の蓋を取る忍。 なんかキャラが崩壊しかけていますが、暖かい目で見守ってあげて下さい。 鍋の底に見えたモノは………… 「ロールキャベツ?」 「その通りだ茅島、俺の最も得意とする料理だ!」 ……なんか忍って抜けてるよな…… 得意料理がロールキャベツって、百人中百人が意外って答えるだろ…… ぜひとも得意になった経緯を知りたいね。 「さっさと食え、冷めちまうだろ」 「はいはい」 俺は最初に鍋に入っている透き通った液体を口に運んだ。 何と言ってもスープが命だからな。 「………!」 「………どうだ?」 「これ、既に冷めてないか?」 「何!?」 率直な感想が口から出てしまった。 忍が急かすから暖かいのを期待してたんだが、なんか生温い感じ? とにかく暖かいから生きるような味が死んでいた。それでも充分美味しいけどね。 「……何故だ!せっかく鍋ごと持ってきたのに……」 膝をついてがっくり肩を落とす忍。 この俺様少年がここまで落ち込むのを見ると、人間って素晴らしいなとしみじみ思えてくる。 「忍、鍋冷めてるんだから中身も冷めるだろ?」 渡の痛恨の一撃。 さらにがっくり肩を落とす忍。 うわぁ、忍のこの姿見たら、学校中の女子が萌えに走るな、いつものギャップにやられて……
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