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「美味しい料理を食べさせてくれるんですよね?」
「当たり前じゃな~い?今日は幸助の誕生日だしね~」
じゃあとりあえずそのニヤニヤを止めて頂いていいですかね?
今思うと、俺の苦労話にこの人が絡んでなかった事はなかった。
変な事されては、カメラやらボイスレコーダーやらで奴隷扱いにされ、揚げ句の果てにはそれを谷口に伝授する始末。
当然料理にも何か仕掛けがしてあるのだろう、そこだけはしっかり注意しなければならない。
「私はこれよ~」
そう言って、綾さんがテーブルに置いたのはまさかの冷奴だった。
「へへっ、綾さん勝負捨てたの?」
「黙れ童顔」
「童顔は黙ります」
……俺さ、正樹ってMなんじゃないかって最近思うんだよね?
自分から仕掛けるくせに、あっさりと負け認めるし……
おっと話が逸れた。
さてどうリアクションすればいいんだ?
冷奴なんてロールキャベツ以上に想定してなかった。
……まさか、これを最初から作ったのか!?
……成る程、それは確かに評価しがいが「言っとくけどこれ市販よ~?」
あなたは何がしたいんですか?
正樹じゃないけど、勝つ気ないでしょ?
俺は、綾さんの意味不明な行動に呆気をとられていた。
だが、俺は綾さんが綾さんたる由縁をこの瞬間に思い出した。
「そぉ、何の変哲もない冷奴だけど~これを入れるとあら不思議!私の料理にメロメロになっちゃうわ~」
そう言いながら綾さんは、手元から明らかに怪しい液体をポツリと一滴冷奴に落とした。
その液体は、鮮やかな緑色をしていた。
「ほーら食べなさい?」
無理だコラ。
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