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「なあ沙羅」
「ん?」
俺達は今、孤児院に向かって歩いている。
ちなみに恋人繋ぎというのを実践中、恥ずかしいけど、心地良い。
ホント……幸せだ。
「なんで俺は解放されたの?沙羅達が何かしてくれたんだよね?」
さっき、沙羅は夏休みを惜しんでまで頑張ったと言っていた。
だから、この幸せの裏には沙羅達の頑張りがしっかりあるんだ。
それを知らないで、俺は幸せを得られない。
「一つ言うとね……私達に援助してくれる会社が代わったの」
「……えっ……?」
代わったって、じゃあ如月さんがもう関わらないって事?
だから俺は、解放された?
……でも……どうやって……?
「あの後すぐに梢さんに事情を聞いてね、私のせいで幸助君が離れたんだってもっと悲しくなったんだけど、梢さんがお母さんから養ってくれそうな会社のリストをもらってきたの。
それから一生懸命いろんな所回ったんだけど、そう簡単に首を縦に振ってくれる訳もなくて……
だからね、私達の事情をちゃんと話したの。
私が婚約させられそうだった事、しなきゃ契約を切られちゃう事、そして、その為に幸助君が行かなきゃいけなかった事。
そしたらね、前とは反応が変わってきてね、やっと考えてもいいっていう企業があったの。
そこは料理店で、幸助君が如月さんほどの会社の料理面で働いてる事を聞いて『彼がウチで働いてくれるならいい』って……
初めはすっごく悩んだんだけど、これで幸助君と会えるんならと思って私の勝手で了承しちゃったの……
……だから、幸助君また私達の為に働かなきゃいけなくなったの……しかも勝手に了承して……ゴメンね……」
「何言ってんの?」
「ひゃっ」
どんどん表情を暗くしていく沙羅の肩を抱き寄せる。
「いいんだよ別に、だって前と全然違うじゃん。確かに働かなきゃいけないけど、沙羅と会えるんだよ?充分じゃんか。
それよりも……ホントにありがとう、俺の為に動いてくれて……」
俺がいじけている間に、皆は俺の為に頑張ってくれた。
夏休み返上してまでさ……
感謝しても……し切れないよ……
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