6人が本棚に入れています
本棚に追加
春───。
桜が咲き誇り、新たにこの地に足を踏み入れた者をまるで歓迎するかのように、その花を少しだけ風に乗せて散らす。
風が、その桜の花びらと共に髪やスカートの裾を静かに揺らす。
髪を押さえてそこにある大きな桜の木の前で足を止めると、すでに先客がいた。
真新しい制服に身を包んでいるのが分かる。
自分と同じ新入生だと、何だか嬉しくなりながら葵は近づく。
別に何かを話し掛けようと思ったわけじゃない。
ただ、自分と同じようにこの桜の木に魅了された人が他にもいたのかと嬉しくて、一目顔を見てみようと思った。
どんな人なんだか、興味が湧いたからだろう。
最初のコメントを投稿しよう!