†入学式†

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「大丈夫だから、ゆっくり息を吸って」 その声に促されるように朱里は従い、息を吸う。 「止めて」 吸ったままの状態で息を止める。 息を止めてる間、咳を出したい衝動に駆られた。 でもそれを我慢して、少年の言葉に耳を傾ける。 この苦しさから解放されたいという気持ちが上をいったのだろう。 次に出るであろう言葉を、必死に待った。 髪が風に揺れてバサバサになっても気にならなかった。 その言葉だけを、ひたすら待つ。 「ゆっくりと、時間を掛けて吐き出して」 言われた通りに溜めていたものをゆっくり、目を閉じたまま吐き出す。 それを吐き出し終わった後、苦しくなくなったのに気づく。
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