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いつの間にか涙も止まり、しばらく経っても咳や嗚咽が出ることはなかった。
「……止まった」
嬉しくて、思わず声を出していた。
緊張の糸が切れたとき、少年に触られている頬が熱いのに気づく。
途端に恥ずかしくなる。
でも少年は特に気にも止めていないのだろう。
そのままの状態でまた言葉を発する。
「目を開けて」
そう言われてしまえば開けないわけにもいかない。
だから恐る恐る目を開けた。
視線の先に少年の顔はなく、薄く形の良い唇が見えた。
そこで初めて身長差があることに気づく。
顔を見るためにゆっくりと視線を上げる。
すると少年は朱里を見ていて、目が合った。
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