第一章 ―地下組織―

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アインザッツグルッペンとは、独逸軍で東方侵攻時に必ず編成された部隊であり、新たに占領した領土においてナチス党の政治的敵である、ユダヤ人やジプシー、共産主義者などを裁判を経ずに抹殺する事を任務とされた組織なのだ。 ミュラー中尉こと、ウラジーミルらが更に大通りを行くと、先ほどの軍曹が言った通りにまた、警備兵に出くわした。 ミュラー中尉らが今度は、身分証を出しながらアドルフ軍曹の名を告げると、彼の言った通りその警備兵はそれ以上調べようとはせず、ご丁寧にホテルへの近道を教えてくれる始末だった。 これら、武装親衛隊の軍服を着た中央亜細亜系の顔付きの彼らを、警備兵らが疑わないのは独逸軍の国内徴兵事情を説明せねば、ならないであろう。 ナチスドイツの親衛隊と言えば、純粋なアーリア人だけで編制された、エリート集団というイメージがあるが、実状は違っていたのである。 独逸では、徴兵で真っ先に優秀な人材を供給されるのは国防軍であり、ナチス党の独自の軍隊である武装親衛隊へは、志願兵のみしか入隊できなかった。 当然、当時急激に組織を拡大していた武装親衛隊では、人員が不足して同盟国の独逸系人種から果ては、占領地の敵国人種まで受け入れなければ、その膨張の速度に追い付けなかったのだ。 武装親衛隊を構成する部隊は、そのほとんどが外国人で構成されていたのである。
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