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それゆえ、亜細亜系の彼らでも疑われずに済んだのだ。
間もなくして司令部へ着いた、ミュラー中尉ことウラジーミルらは、会議室らしき部屋へと案内されしばしの間待たされている時間を利用して、この部屋が盗聴されていないか素早く調べた。
間もなくして、その部屋へ一人の国防軍大佐の階級章を付けた、目付きの鋭い秀頭の男が入って来た。
「ハイル・ヒットラーッ!」
「ジーク・ハイル。」
「失礼いたしますが、フォン・トレスコウ大佐でありますか?」
「あぁ、君がミュラー中尉かね?」
「はい、昨年ブランデンブルグ門でヒンデンブルク閣下を見られたと、お聞きしましたが?」
「いや、それはビスマルク閣下の間違いだろう。これで話しが出来るかな。」
「はい、トレスコウ大佐と確認させて頂きました。貴方の伯父のフェードア・フォン・ボック元帥閣下から、お招き頂いたW機関の者であります。」
「君らの国が、こんな大胆な事を提案してくるとはな。」
「おっと!その件は、内密に願います。間違い無く、我々の方で実行致しますので…。大佐には、その後の対処をお願い致したくこうして参上致した次第であります。」
「ふん、あれほど私からの要請を拒絶していた伯父が何故、貴国の提案を受け入れたのか知らぬが、心配はいらんよ。独逸にのみ忠誠を誓った我ら帝国騎士『ライヒスリッター』は、鉄壁の団結で事に当たるので安心したまえ。」
この夜、ウラジーミルは一切の記録を許されずに暗記させられた、帝科研からトレスコウ大佐への指示を、一語一句違わずに伝えたのである。
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