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俺は驚愕していた。
「あなたが発端でしょうが!」
「テメーも参加者に分類されるんだよ!無駄な抵抗はやめろ!」
舞い散る粉塵。霞む視界。響く爆音。
「あ、来たね境夜、バッドタイミングで♪」
5、6時間目の授業を受けて、案外理解度が低い自分に悩み果たして脳を融解させながら放課後の生徒会室に顔を出してみればこれである。
「お前の素直な『ごめんなさい』が世界を変えるんだ。宇宙を変えるんだ。いや、神すらも凌駕してこの世の覇者と―――」
「話が逸れすぎて何が言いたいのか分かりませんよ、既に。てか、どれだけ私を持ち上げたってあなたも同罪ですから」
「同罪?笑わせるな。俺言ったから。やめとけって言ったから。聞こえなかった?俺ちゃんと言ったからね小さく!」
「小学生の言い逃れでしょうそんなのは。そんなに棺桶に入りたいですか?」
何を隠そう、現在俺は人類を超越した生徒会役員同士の破格のケンカを前にただただ目を細めて唖然としているのである。
おっと、また瓦礫が飛んできた。あ、でも海留が人指し指を打ち込んで粉砕してくれたようだ。サンキュー。海留はこちらを振り向き、
「気にしなくて良いからね?昔っから一週間に一回はこうなってるから」
一週間に一回って、こんな迷惑極まりない無駄ゲンカをそんな頻度でやってもらっちゃ、俺の精神や校舎共々壊れ落ちていく羽目になるだろうし第一、やってる本人も飽きるんじゃないか?
「境夜、止めて」
すると声をかけてきたのは俺の隣に立つ海留のすぐそばにいた稲森さんで、眠そうながらこちらを見上げて騒音源たる川御&隆騎を指さした。
「構いはしないが……」
ケンカを止める方法だったらいくつも心得ている。俺の脳内ライブラリを探せば、このケンカを治めることだって容易だ。巧みな話術で平定できる。
まあ、俺が声を割り込ませる余地がこのケンカにあればの話だが。
言ったろう?人類を超越したケンカ、と。
そして俺は目を細めて唖然とするしかなかったわけだ。あっ、ほら、またレーザー的なのが俺の頬をかすめた。
そもそも現在、ケンカの原因すら分かっていないというのに、俺は二人に何と言ってケンカを止められよう。無茶だ。
やれやれ、無闇に割って入れば俺は人肉と化すだろうな………。
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