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海留、コイツらのケンカの原因は何だ?とは既に俺も聞いてみたさ。なのに俺が今もなおドア付近に立ち尽くすのはつまり、海留にも原因が分からないらしく、それと共に俺にも成す術がなくなっているということである。おそらく海留も俺と同じく、ケンカが始まった後にここへ来たのだろう。
「しかし、三奈のヤツはどうした。こういう時こその生徒会長だろ」
ここで俺が気付いたのが、生徒会長の不在。いったいこんな時にどこで何してんだよ、このままじゃ安心して椅子にも座れん。
てか、そもそも予算案の件で三奈には話があるんだった。秀悟のヤツ………。こんな面倒な仕事になるんだったらきっぱり断って置くべきだった。
すると海留は顎を指でいじりながら、
「会長はね……職員室じゃないかな?」
もっとも納得の行く答えを返してきた。
どうする俺。このまま帰っちまうのも手だが、秀悟の余計な頼みのせいで憚られる。このまま部屋を出て廊下をうろつき、三奈の帰りを待って用をさっさと済ますのも良いが………。
「境夜」
稲森さんの一声。………やっぱ、好感度って重要かもしれんな。って俺、何考えてんだか。
俺の考えた作戦はこうだった。
「海留よ、武力でなんとかするんだ。後は任せた」
「僕がやったら意識不明になっちゃうよ」
大層な悩みをお持ちの武帝陛下。実際そうなりかねないのが恐ろしいところだ。あと、やるなら川御には恩があるから、隆騎の方を意識不明で頼む。まあ、んなことを海留に頼んで実行してもらった日には俺の上履きには隆騎によって画びょう製剣山がこれまた出来上がっていよう。
「じゃあ他にこいつらを止める方法はないのか?」
「……好きなもので釣るとか、たぶん会議中だけど会長を呼んでくるとか、何か大切なものを奪うとか、磔刑に処すとか」
発案順に徐々に実行可能確率が下がっていっている。最後のに至っては磔にするまでが一苦労だろう。ゆえに俺は、
「やつらの好きなものって何なんだ?」
「好きなもの、かぁ。川御だったら面白そうな本とかかな?」
……微妙だ。何かこう、引き付ける力に欠けるような気がする。
「ほら川御、面白そうな本だぞ~」とか言ってみて、果たしてケンカを中断してくれるか?「うるさいですね。滅ぼしますよ」といった感じに軽くあしらわれそうだ。どうしたもんかね……。
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