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好きなもので釣る、三奈を呼ぶ、何か大切なものを奪う、磔刑に処す………いや、最後のはパス。
そもそもどんな作戦にしても、川御が日課的で犬猿的な隆騎との口ゲンカをそう簡単に中断してくれるのかと言うとかなり否に近いからして、本で釣るなどというリスキーかつ絶望的な作戦は一旦取り止めて、
「仕方ない、次はこうするか」
俺は作戦を変えることにし、部屋中央の大机に置いてある、今となってはすっかり埃を被って木材と間違いかねない隆騎のノートパソコンを、多数の爆発によって揺れる大机からすばやく鷲掴みにした。
「三奈呼ぶのはスキップだな。次へシフトしよう」
なぜか?三奈に迷惑をかけた日には勿論居心地が悪くなるだろうし、第一に俺がこれをやってみたいからだ。
俺はノートパソコンを開く。いや、開き続ける。なお力を加える。180°を突破させるべく、勢いを翳らせずに。そうして俺は、
「隆騎ぃー、あと3秒でお前の大切なものは金属塊と化すぞ」
爆心地に向かって声を飛ばしてみた。すると面白いくらいの反応速度で、
「貴様ァァァ!!俺の命なんだよそれはァァァ!!」
予想通り隆騎はケンカを即中断して、環境に悪そうな埃の濃霧から切り裂かん勢いで脱出し、飛び込み前転の要領で俺の手からノーパソを奪取、続いて振り返って俺の額を狙うべく拳をかためた。
「未遂でも死んで償えぇぇぇ!!」
するとそれを見た海留が俺と隆騎の中間に立ち塞がり、隆騎が拳を奮うのより早くソイツの眉間に五本指を突きつけて、何やら小さく呟いた。すると隆騎は突然犬のようにおとなしくなった。
これを良い機会に川御は隆騎に追撃を仕掛けると俺は思っていたのだが、こちらは予想に反して実行されず、地蔵のように一連の出来事を静観していた。少しは周囲に気を配るようになったと言える。
「さ、取り調べに入ろうか♪」
今や隆騎に五本指を突きつけた時の威圧感を欠片も残していないスマイリーな海留は、川御が修復中の部屋ないし大机を掌で指した。
その間も隆騎が顔を青ざめさせて「~~~!」と、何だか声にならない叫び的なものを床に向かって放っていたのを見て、俺は少なからず目の前の生徒会会計に畏怖を覚えた。
そんな奇怪なムードにも関わらず、稲森さんは表情一つ変えないで、こっくりこっくりと椅子に座った状態でまどろんでいた。
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