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生徒会室左隅、いつの日かに座ったことのあるソファーに俺は再び座っていた。来客用の会話スペース的なものらしい。落ち着いて話すのなら部屋中央の机に備えたパイプ椅子に座って話すより明らかに気は安らぐ。
俺が以前このソファに座ったのは……そうだな、この生徒会、そして俺自身がとんでもないものだという事実の暴露を川御から受けたときだったかな。
あれさえなければ俺はこんな謎めいた生徒会に強制入会させられることもなく、今頃秀悟とバカしてんじゃないか?
…という、思い出したくない思い出を思い返すより、今は目の前のことに力を注ぐのが先決だと判断した俺は、隆騎が海留によって縮みこまっているチャンスを逃さず、手短に事情徴集を行っていった次第である。
聞く話を要約すると、隆騎が三奈のパソコンの中身を覗こうと、マウスをスイスイ遊ばせていた所に川御が止めに入り(このとき川御が隆騎に吐いた暴言については割愛)、それに対し隆騎は負けじとファイルを右クリックして『削除 D』にマウスポインタを合わせて抵抗したらしい。…するなよ。
パソコンに詳しくない川御はそれの意味することを知らずに、暴言を吐きながら(この時のものも割愛)左フックを隆騎に容赦なく決めたがために、
「誤ってデータが全消去、ってわけだな?」
「ああ、川御によってな」
と、隆騎。
「どうしてそう締めくくるんですか。今から謝れば火葬と屈葬、選ぶ権利くらいは与えますけど」
と、川御。
相も変わらず眼光による攻防戦を行う二人に対し俺は聞こえないように溜め息をつきつつも、脱線しかけた話を正しいレールに戻すべく、
「それで、どんなデータを消して慌ててんだ?三奈にバレたらヤバいものか?」
すると川御はさすがに空気を読んだようで、一度目を閉じた後に、
「たぶん……予算案か何かでした」
「予算案?」
個人的に背筋が瞬間冷凍された気がした。あのアホのせいでその予算案とやらに用がある。
それはさておき疑問に思うのが、
「お前らの使う……命裁術?で復元できたりしないのか?」
命裁術?なんだそりゃ。と誰もが思うことも無理はなく、そもそも普通に暮らしていれば出会うことのない現象である。いや、技である。
俺だって最初は納得の欠片すらなかったからな。それを見た今でも、少し否定気味ではある。
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