5人が本棚に入れています
本棚に追加
正座をして道端で遊ぶ会長「風上三奈」に対して心の叫びが容赦なく脳内を駆け巡る。コイツは己の姿に自覚がないのか!?まさか道行く人々にはコイツを超人どころか生徒会長だなんて思えまい。
俺が自覚してしまうほど渋い顔をして見ていると、三奈と思しき人物(てか絶対本人)は、
「わあ~」
とか呟きながら桜の山を再び一すくい。バサッと舞い落ちる花びら。
…放っておけまい(世間体とこちらの羞恥的に)。
「おい……三奈?」
「ん?あ、境夜!」
案の定我が生徒会長であった。良く考えたらこんなに綺麗で長い髪を背中に流してる奴なんざ、そう簡単に見つからないだろうな。
「オメーはこんなとこで何をしている?」
「そりゃあ……」
言葉に詰まって少々斜めを向く三奈。
「……地形調査?」
「登校中にする必要ないだろうが」
見苦しいごまかしをした三奈はふうと溜め息を吐き出し立ちあがって、意外にもこう告げた。
「いや、ホントはね、生徒会で花見にでも行こうかなぁーって」
……ここ数年めんど臭かったからしちゃいなかった俺の意表を突いた花見というワード。
「それ本気か?」
「何よ、行きたくないの?」
「別にそういうわけじゃあない」
なんと言うか、道端で思いつくような反射的立案を実行していって、生徒会はこの先大丈夫か?という心配の念が込み上げたというだけだ。
「とにかく、この間は随分と慌ただしかったから、何か気の安らぐイベントは必要よ。明日はちょうど土曜日で休み、絶好の機会じゃない」
正直、関東の暴君や、話してるだけで苛立つ脱力野郎、睡眠欲を会話より優先させそうな人や真面目・毒舌が1:2の奴や生徒会の頂点にして暴走特急である目の前の三奈と共に飯を食うんなら、家で漫画読んでいた方が安らげそうな気がする。比喩に聞こえる君、全部実話だよ。こういう奴らがこの世に、しかもよりによって俺の高校の生徒会に集結しているんだよ。
「境夜、空を見上げて何を思ってるのよ」
「……別に―――」
「じゃあ朝の話し合いで早速プランを進めていきましょー!」
元気よく宙に腕を突き上げる三奈。………朝っぱらから色々と考えさせてくれるよな……。
こうしてまさしく俺にのみ、春一番という名の嵐が轟轟と吹き荒れる運命となったのだった。
最初のコメントを投稿しよう!