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「あいつらと花見とは………」
革靴を脱ぎながら呟く。
行くが吉か行かぬが吉かと言ったらどっちなんだろう?そう考えながら歩を進める事になるのは必然で、そのため俺はその間の三奈の話は半分以上聞き流して生返事をしていた。
春の陽気だけが俺の汗を滴らせたわけじゃない。こうして出た結論は、
危険。
もはや吉凶の問題ではなく、凶は既定、そしてプラスαの特典で危険付きであると言うことだ。
すると三奈はこちらを向くと眉間に皺を寄せて、
「ちょっと境夜、聞いてないでしょ」
「……きーてるっつーに」
勿論聞いていない。
「じゃあ私、砂糖は何グラムって言った?」
「………知らん」
「やっぱり聞いてないじゃないの」
とか言って再び説明し始めた。ドーナツの…という冒頭で話が繰り広げられたから、多分砂糖というのはドーナツ作る時の分量のことだな。どこまでも興味のない話題だよ。
生徒会室に行く間の廊下、いつもより騒がしさを感じたがそれはさて置き俺と三奈は会棟に到着した。
会棟というのは生徒会を始め各委員会が集う会議専用の贅沢な建物のことだ。ホントにここ公立高校?という疑問を以前すかさず抱いた記憶がある。
「やっぱりいつ来ても人の声がなくて不気味ね」
相も変わらず高級感溢れる内装で、どこまでも白銀な会棟の3階、ついこの間面影もなく崩壊していたとは到底思えないほどの正確な修復処理が川御によって施されていた。普段ちっとも壁なんかに思い入れをしない俺でも、今日ばかりはキョロキョロと辺りを見回してしまう。
「私はもっと騒がしい方が居やすいわ」
「俺も同感だが、その騒がしさってまさか戦場のような騒がしさとは違う意味だよな?」
すると三奈は心外だったのか、少し目を丸くして、
「そんなわけあるはずないじゃない。戦ってばかりいたら体がもたないわよ。そんな騒がしさだったら今みたいな静けさの方が数倍良いわ」
それから三奈は「腕を一振り」とか「命裁術」とかいうワードを交えて語り始めた。命裁術というのは、我が生徒会のメンバーの使う魔法並の反則技のことである。
これも興味がない、いや、代わりに恐怖を感じるため聞き流しているといつの間にか俺らは生徒会室を目前としていた。
「花見よ?花見。きっとみんな賛成ね」
見慣れたドアがそこにある。
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