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「ん?」
「…俺達は…恐らくは一人を除いて、最初はお前達魔族を恨んでいた。」
平和だった天界を乱し、同朋を襲い、苦しめる。
その原因たる魔族を許せるはずがない。
「だが…今はそうではない。…一人の生き様を見たら、考え方が変わった。」
火が揺らめく様を見つめる。
「…クリアリスか。ほんとに変わった女だ。けど…いい女だ。」
いい味だったし…とレイドを見ながら笑う。
「…次は斬る。」
「ははっ…怖い怖い。だが、人の物程欲しくなるもんだろ?」
「……。」
「睨むなって。」
からかわれているのが分かって、レイドはますます不機嫌になる。
ジィノは一頻り笑うと、急に真剣な表情をした。
「…レイド、俺から一つだけ…言っておきたい事がある。…もし…。」
「……。」
「もしも…姉さんと…俺と戦っていたあの人と…戦うことがあっても…命を取ることはしないでくれ。」
頼む、と深く頭を下げる。
「今まで散々…天使を傷つけてきた俺が言って良いことじゃねぇけど…頼む!」
「…解った。」
「…へ…。」
「何だ、拍子抜けした声を出して。解ったと言った。」
ジィノの表情が可笑しかったのか、小さく笑った。
「そ、そんなあっさり返答されると思わなかった。」
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