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宅配便が届いた。
宛名は鑑定屋と書かれている。
送り日は昨日。
エセ賞品かなんかか、
送りつけ商法か…。
千尋がこう思うのは持ち前の冷めた感情から…だけではなく、見るからに人が入れるだろう大きさのでっかい段ボールが届いたからだった。
「こういうのは開けずに置いておく、だったかしら。それからこの手の会社に電話をして…」
一人ぼっちの家は広い。
…もう母も姉も、父もいない。
皆、出て行ったのだ。
千尋を置いて。
「世の中、本当に面倒だわ………。」
慣れた手つきで段ボールを隅に置く。
いつ何が起こるか分からない、けれど千尋には普遍の事。
世界が滅ぼうがどうでもいい。
ただ自分が1番、【生】に無頓着なだけ。
叶うことなら餓鬼や病気で苦しみ、命を落としてしまう子らと代わってあげたいと思う。
決して善意からではなくて…それは偽善だ。
必要とされる命を残すべきだと思う。
死に急ぐ人はもっと生きたい人の気持ちを考えなくてはいけないと誰かが言った。
考えてどうなる…?
代わってあげることも出来ない。
「はぁ…」
今年で千尋は高校三年になる。
高校を出れば、大学に行く予定もなく。
願書にも、【就職につく】に記入した。
別段頭がキレるって訳でもなく、阿保って訳でもない。
千尋は程々に賢い。
浪人生をいれたテストの順位も二桁代だ。
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