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千尋はしぶしぶタウンページを手に、電話の元へ行く。
全く、面倒だ。
「…」
ガサ…
受話器を手に取り、ダイヤルを回す。
後ろから変な音がしたが一切無視した。
千尋はもう何も恐れてはいない。
1番怖いのは身近な人だったから。
「はい、どうしました?」
受話器の向こうから、女の人の声が聞こえた。
「あのですね、今日、送り付け商法をされまし…ブチンッ」
……ツー…ツーッ…
途中で回線が切れた。
千尋はどうしたのかと受話器を持ったまま、電話を見遣る。
「千尋は早とちりだね。」
落ち着いた声が、いつの間にか電話の隣で座っていた小さな人形から聞こえた。
空耳かと思った。
その人形は水銀色の髪と水色の目が特徴的だった。
「…人形?」
「あぁ。」
その人形はゆっくりと後ろを指差した。
その指差した先はあの段ボールを置いた場所。
小さな手に異議なく従うように、千尋は自然と目を向けた。
そこには四つの柩が置かれていた。
その内の三つの中にはおとなしく眠る別の人形達がいた。
一つの柩は綺麗に開いている。
もちろん、段ボールも大きく開いていた。
正直、開けた記憶は一切ない。
「…人形なんて要らないわよ。」
千尋は水銀色の人形に向かってそう呟く。
物が増えるだけだ。
…厄介だ。
見向きもしない。
「その言い方はねーんじゃねーの?」
下から声がした。
それは小さな小さな体を持ち。
一つの人形が柩から出て歩いていた。
先ほどの水銀色の人形とは打って変わって、金色の髪に飾りをつけ縦髪を長く伸ばした人形が乱暴に言った。
「動くの…?」
彼は千尋の言葉を聞いて少し得意そうに笑う。
「すげぇだろ?」
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